《MUMEI》
荒井 純
とある一本の電話から始まった。

「もしもし…夢山滝ですが」
「荒井だけど」
昨日の会話を思い出して電話したらしい。

「…で?例の件は承諾してくれるのかい?」
「あぁ。任せてくれよ」
「ごめんなぁ、医者の仕事もあるのに」
「いや、いいんだ。上のほうも俺の事分かってるから」

上のほうとはきっと院長や教授の事だろう。
「滝…仲間になったらやる事があるんだろう?」
「あぁ。能力を測定しなくちゃいけないのさ。能力者が一定以上より高い場合じゃ、取り調べだってある」
ちなみに俺が時々やっている検査がこれ。

「へぇ…もしかしたら俺がお前に次いで二番目に高いかもしれないんだろう?」
そう。なぜか、司令官が言っていた。
「うん…体に負担はかかるがな」

「そっか…じゃあ明日から頼むよ。一応顔出しぐらいは出来るからさ」
「おう、じゃあな」

俺は窓から景色を眺めた。片手に電話を握り締めながら…
(もう…後戻りは出来ない)

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