《MUMEI》

視線気付きに振り返ると、先生が立っていた。

「あっ。」

「気になるよな・・・。」

私が星の名前を口に出してしまったことで、そう思わせてしまったらしい。


先生はソファーに腰掛けた。あまり大きくない三人掛けのソファーに、私も座った。少しだけ、距離をとって・・・

「・・・俺は、自分や相手の女性が『好き』だと言う気持ちをもって接すると、眩暈と吐き気がとまらない、という心身障害なんだ・・・。」

私は無言で先生の顔を見つめた。・・・そんな障害・・・もう二度と人を好きになるなってこと?

「洋介から聞いただろ?ユウキの話・・・。あいつを裏切ってしまったことに、自分自身で呪縛をかけているんだって、医者は言ってる。」

「呪縛・・・。」

「だからもう何年も、気持ちを持って女に触れていないよ・・・。」

確かに、百花たちが言っていた、『好きだとわかると冷たくなる』というのは、その病気が原因なのかもしれない。でも私は何かが引っ掛かっていた・・・・

「先生・・・わ、私は?」
気持ちを持って触れたことないって・・・私は手だけれどキスもされたし、不可抗力だけども抱きしめられたりしている。

先生はいつもの優しい笑顔で笑い、こちらを見つめた。

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