《MUMEI》

「おまえは、俺のこと好きなの?」

「・・・。」

どさくさにまぎれて、告白みたいなことを言ってしまった・・・。私は恥ずかしさのあまり俯き、顔が上げられなかった。耳まで赤いのが自分でもわかる。

先生は私の頭をぽんぽんと叩きながら、
「うそうそ。本当なら、相手が自分に少しでも好意があるとわかる時点で立っていられなくなるから・・・。」
と言った。

「立っていられない?」

「いきなり眩暈が襲ってくるんだ。触れられるだけで、立っていられないくらい・・・だけど。」
先生は話しを続ける。

「広崎の場合だけ、今までと様子が違う。」

「私だけ?」

先生は少しだけ恥ずかしそうに、笑顔を見せる。
なんだか選ばれたようで嬉しかった。

「で、今日病院に行ったんだ。あれから10年経ったけど、初めてのことだったから。」

真剣に見つめながら、言われたから、私は目を合わせることができなくて、瞼を伏せた。

「医者は、好かれると困るという感情の前に、可愛いという気持ちが来るからじゃないかって。」

そう言って、先生は私の頬に触れた。

「あ、あの。」

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