《MUMEI》
わかっている
躰なんて…洗う余裕なんかなかった。

勢いよく流れ落ちるシャワー、目の前にある鏡の中には…
全身くまなく朱の跡を纏った…俺がいた。

「はっ…」


壁にもたれながらぼんやりと水の流れを見る。



熱いシャワーは床を程良く温め、俺の脚元を叩きつける。


―――まだセックスの余韻が脱けない。
恐る恐る、そっと…
自分では触れた事のない部分に指先を這わせてみた。


「―――ふぅ…、は…」



――軟らかく…溶けてしまっている。




「―――はっ…」




意図も簡単に中指が根元まで埋まり何の痛みも感じない。



指の形のまま受け入れるここ…。


入り口は吸い付く程にいやらしく、奥は変に軟らかかった。
「―――ぁっ…」


躰が震えると中はそれ以上にビクビクと痙攣する。
指にダイレクトに感覚が伝わり、勝手に絞めたり緩んだりしている。


男同士のセックスなんてまるで考えた事がなかったのに、こんなんじゃ俺だってしてみてーやって…、まるで人事の様に思った。


――と、同時に。



ケツに平気で指を突き入れる自分の行動にも、思わず笑いがでてしまう。

冷静に中の構造を探る自分。
扉の向こうには長沢が居るのに、いつ見つかるか分からないのに…、
指先がふと、あの部分に触れた。

―――俺を狂わせた…長沢が執拗に攻めてきた……少し硬い場所…。

ゾクゾクと甘いなにかが全身を突き抜ける。
精神的なモノとは違う切なさが胸を苦しくさせる。


俺は…指をゆっくりと引き抜き、またぼんやりと湯の流れを眺めだした。

――慣れたキス
――慣れた愛撫
―――ゴムも…簡単に着けていた。

首筋に吸い付きながら足の指先で睾丸を愛撫された時…

相当な慣れを感じた。
セックスの経験、他にはないけど……
ちょっと遊んでいる奴とは比べモノにならないものを感じた。



――別に…だからといってそんな事はどうだって良いんだ。

ひたすら抱かれている間、確かに俺の事、スッゲー好きなんだなって事は伝わってきたし、どこか…そんな風に求められる事に対して……イヤじゃない自分もいた。
――ただ…、
あまりにも自己中心な長沢。
ずっと傍にいて抱きしめてくれてさえいれば、俺の事を一番に優先さえしてくれていれば……、たったそれだけの…、当たり前な、簡単な事がまるで出来ない……長沢。

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