《MUMEI》 眠り歌詞を打ち終えたミライが端末をミユウに返す。 ミユウはそれを確認し、少し首を傾げた。 「一曲だけ?」 ミライは頷く。 「……ま、いいか」 あまり気にすることなくミユウは端末の操作を始めた。 音楽配信サイトに曲と歌詞を送り、配信日時の指定をする。 その作業を終えるとミライは窓へと目をやる。 深い闇色が広がっている。 「……今日はもう寝よう。明日、朝一で移動だからね」 ミユウが言うと、ミライは素直に頷き、ソファに身を横たえて目を閉じた。 ミユウは布団がわりに自分の上着をかけてやると、再び端末と向かい合う。 ミライの端末とミユウの端末は繋がっている。 二つともミユウが作ったものだからだ。 ミライの端末に誰かが接触してきたなら、それはミユウにもわかるようになっている。 今日のように。 今日、誰かがミライの端末にアクセスしてきた。 おそらくミライの行方を探してのことだろう。 誰かが通報したのか、あれは警察の人間だったようだ。 あまりいい腕はしていなかったが、一応、二度と接触をしてこないように相手のシステムを初期化するという脅しをかけておいた。 しかし、警察という組織はしつこい。 念のためにガードレベルを上げておこうと、ミユウはキーを叩く。 「……こんなもんかな」 そう、一人頷いたミユウは、座ったままの姿勢で浅い眠りについた。 前へ |次へ |
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