《MUMEI》
隆志編
「俺と…別れて欲しい」





葵のマンションを訪れたのは実に二週間ぶりだった。




付き合って2年、今までそんなに開いた事はなかった。




葵はうつ向き加減に長めの巻き髪を暫く優先で遊んでいたが、ふと視線を俺に合わせてきた。




「イイよ、別れてあげる」




泣いて止められる事を覚悟していただけにあまりにもサバサバした葵の表情に、俺は言葉を失った。



「―――なんか…そんな気いしてたしさ、
――最近のたーちゃんウチと一緒に居たって…上の空だったし」





――たーちゃんの中でイヤな女になりたくないからって…あまりにも穏やかに笑いながら俺と別れた葵。






――スッゲー愛されてたの今更実感して…




彼女に対して申し訳なくて…。




自分から別れたくせにその晩はめちゃめちゃに泣いた。










「それ限定のやつじゃん?見せて!!」


「――いいよ」





買ったばかりのブルガリの時計。





少し前に裕斗がブルガリのキーリングを持っているのを見てつい買ってしまった。




裕斗は暫く眺めた後俺に返してきた。




「間違いない、本物です」



「何だよもう!ブルガリ本店で買ってきたんだから本物に決まってんだろうがよ」

いつものカフェでいつものアイスコーヒーを二人で飲む。





――好きだって言ったら…裕斗はどんな反応をするだろうか?





―――気がついたら本気で惚れていた。


毎日、いや何時でも…彼の存在が頭から離れる事がない。






――好きだよ……






好きになってしまった………。




もう、この気持ちに嘘をつくことは出来ない。


他愛もない話しで盛り上がる。




本当に…楽しそうに笑う俺の、
―――――愛しい人。




――もう…



親切な先輩ではいられない……




――もう……
ダチは演じられない…



――――……。





―――裕斗………






俺は…真剣に彼に向き合う。





するとそんな俺につられたのか裕斗から笑みが消えた。





――――たとえ受け入れられなくても…


この想いを真剣に伝えよう。


俺は裕斗の手を握りしめ……




この想いを伝えた。










END

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