《MUMEI》
ヤケ酒
ホワイトデーの翌日は、日曜日で、本来は夜は営業しないのだが…


特別に、たった一人の為に、営業する事にした。


「聞いてる?! 二人共!」

「は、はい」
「聞いてるわよ」


その人物は、翌日ー月曜日が定休日ということもあり、かなりの量のアルコール類を摂取していった。


「も〜、酷いのよ!孝太のヤツ!何様って感じ!」


そしてその人物


『岸美容室』の麗子さんは、目の前にある空のコップを見て『もう一杯!』と、冷酒のおかわりを要求した。


「…孝太君のせいだけじゃない気がするけど」


咲子さんは一升瓶を持ちながら、正直な感想を述べた。


「なぁーによ〜、あいつの肩持つの?

蝶子!」


「は、はい?」


突然の指名に私は戸惑った。


そして、麗子さんに言われるままに、咲子さんから一升瓶を受け取り、麗子さんのコップに日本酒を注いだ。


「蝶子は私の味方よね! あいつ、本当に俺様よね!」


そして、麗子さんは私の返事を聞く前に、バレンタインイベントと、ホワイトデーでの出来事を語り始めた。


(五回、…六回目、だっけ?)


私は初めて話を聞いた時と同じように相づちを打ちながら、話を聞いていた。

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