《MUMEI》

バレンタインイベントで、麗子さんは孝太に向かって、『可哀想だから、あげるわ。私も他にあげる人いないし。この間の、お礼』と言って、孝太にチョコムースを『食べなさい』と言ったらしい。


「大体、『本命じゃないのか?』って、寂しそうな顔されたら、誰だって期待するでしょ?!」


麗子さんの言葉通り、咲子さんも周りの皆も、二人が『いい雰囲気』だと思った。


だから、私も咲子さんから報告を聞いて、二人がうまくいくのでは無いかと思っていた。


(ホワイトデーがきっかけになると思ったのにな…)

それは、麗子さん自身も…

おそらく孝太も同じ気持ちだったに違いない。


「『アパートに来い』ってメールが来たから、ドキドキしながら行ったのよ!

手作りクッキーなんて、柄にもないもの作って待っててくれたから…

思い切って…」


(きっと、孝太もドキドキしてたんだろうなあ)


最初はドキドキしながら聞いていた私も、今では冷静に分析できるようになっていた。


(だから、思い切って…)


孝太も、麗子さんと同じ『告白』をしたのだ。


そして、麗子さんはまた叫んだ。


「『どうしても、て言うなら付き合ってあげる』って!」

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