《MUMEI》

その時、同時に孝太も同じ事を言ったらしいのだ。


「付き合っちゃえばいいじゃない。

『じゃあ、どうしても』って言って」


「そんなキャラじゃないですよ〜私は!」


咲子さんの言葉に、麗子さんは頭を抱えた。


「そりゃ、他の皆みたいに…、『本能で生きてます』キャラとか…」


麗子さんは、顔を上げて私を見た。


「蝶子みたいに可愛い系のキャラなら『アリ』ですけど…」


「そ、そんな」


私が首を大きく横に振ると、咲子さんが『まぁ、そうね』と麗子さんに同意した。


「麗子と孝太君は、頭でいろいろ考えたり、プライドが邪魔しちゃうタイプだものね」


「そうなんですぅ…」


咲子さんの言葉に、麗子さんは頷いた。


(せっかく、両想いなのにな…)


考えて、ふと思った。


(私も、そうだったっけ)


俊彦の気持ちや、自分の気持ちを素直に受け入れるまで時間がかかった。


私がそうなれたのは、運動会の夜で


私にきっかけをくれたのは、麗子さんだった。


(私も、何かしてあげたいな)


タクシーで帰っていく麗子さんを見送りながら、そう思っていた。


しかし、『あんな事』をするつもりはなかった

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