《MUMEI》
日高視点
「お前のご主人様遅いな〜」

「ニャア〜」



シェスターを腕に抱きながらあまり興味のない番組を観る。

勝手知ったる我が家じゃないが自分の部屋よりも遥かにくつろげる佐伯の部屋。
一度遊びに来てからというものアポ無しで平気で遊びに来ている。

こうやって時々佐伯が居ない時も勝手に上がり込んで、今日も我が者顔でシャワーまで浴びてくつろいでいる。
まあ、此処まで図々しくお邪魔してんのは…つか許されているのは俺と佐伯の中学時代からのダチ朝倉だけだけど。

「――――はあ」


携帯を何度開いた事か…。


何度も佐伯に電話をかけたくなったりメールを入れたくなったがその都度我慢した。


―――だってあの長沢の眼…ただ事じゃなかった。


つか今物凄く事故嫌悪に陥っている。
親友としてあれは阻止すべきだったのに俺はみすみす佐伯を渡してしまった。


どう見たって佐伯は嫌がっている。

つか当たり前だ!だって佐伯は正真正銘女の子大好きエロ本大好き早く童貞捨てたいな…


健全な男子だ。

――俺が下手に連絡して余計酷い目にあったらと思うとマジでどうにもならなくて。

奴の住所どころか携番さえ知らなくて、共通のダチも居なくて。

「――落ち着かねーってよ、さえき〜…、大丈夫かな……」
明日から試験休みの三連休。
そしてあの酷く怖かった長沢の眼差し…。


もしかしたら拉致られ縛られて、終わりのないレイプ地獄にはまっているかもしれないと考えると…

「ああ!俺はなんて弱虫さんなんだ!!」


――長沢っていつも目に感情が入ってないっていうか…、


一応爽やかに笑ったりなんだりしてるんだけど目だけはいつも感情がなくてどんなに顔の筋肉使っても無表情に見える。
そんな不思議少年長沢の眼に…初めて感情を見てしまった。
その初めてまのあたりにしてしまったそれが
あのおっかねー眼だった。

いや、ちびりそうな位ヤバかった。

つか何で男の佐伯になんか手を出したがるのか理解出来ない。

―――やっぱあれか?女食いすぎて変わり処求めだしたのか?
佐伯は確かに可愛い顔してるし華奢だから一見女の子に見えなくもない。
――でもなあ…


ガチャ…


「佐伯っつ!!」

「日高!」

突然帰って来た佐伯!俺はシェスターを投げ出し

「お帰り〜!!さえきい〜!ゴメンな――……」

佐伯を腕の中にいれギュッと抱きしめた。

「――ただいま…」

そんな俺を佐伯は俺の背中をポンポン叩いてくれた。

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