《MUMEI》 「あ、のさ」 ざくざくと雪を踏みしめながら、俺は声を絞りだした。 「なに?」 すぐに返ってくる疑問符、お互い前を向いたまま。車もほとんど通らない国道、舗装された歩道の上をひょこひょこと歩いていく。 「なに?」 黙ったままの俺に焦れたのか、さっきよりも少し大きめの声が返ってくる。不思議そうな表情が、月夜にぽっかりと浮かび上がっていた。 「あ、いや」 「なーんだよ、気になるわ」 どもる俺に可笑しそうに笑う銀二、茶色い瞳が細くなって目尻に小さく皺が刻まれるのがわかった。 前へ |次へ |
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