《MUMEI》

「あ、のさ」

ざくざくと雪を踏みしめながら、俺は声を絞りだした。

「なに?」

すぐに返ってくる疑問符、お互い前を向いたまま。車もほとんど通らない国道、舗装された歩道の上をひょこひょこと歩いていく。

「なに?」

黙ったままの俺に焦れたのか、さっきよりも少し大きめの声が返ってくる。不思議そうな表情が、月夜にぽっかりと浮かび上がっていた。

「あ、いや」
「なーんだよ、気になるわ」

どもる俺に可笑しそうに笑う銀二、茶色い瞳が細くなって目尻に小さく皺が刻まれるのがわかった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫