《MUMEI》
アドリブ1
『……え?』

我が耳を疑った。

そんな…バカな。

『―――…っ』

溢れようとする
涙をこらえる。

『原因はよくわからないんだが、どうやら悩みを抱えていたらしい。発見が早くて命には別状は無いそうだ。お見舞いに行くのは遠慮しなさい。酒井の気持ちを考えてな』

先生はそう言ったけど、オレは行かずにはいられなかった。

病室を受付で聞いて、急いで向かう。

――コンコンッ

『ハイ、どうぞ』

中から女の人の
声がした。

そっと開ける。

『……冬馬の友達かしら?』

『ハ……ハイ。クラスメイトのものです。クラスを代表として来たんですけど……トーマ…酒井くんは?』

『寝てるわ。どうぞ、入って』

目を閉じて眠る
冬馬のベッドの
側に座った。

悩みから解放
されて、
きっと今は
安心してるんだろう。

なんだろう……
冬馬の悩みって…。

オレは毎日一緒に
いながら
何にも気付いて
やれなかった。

これで親友
だなんて……
笑わせる。

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