《MUMEI》

「でさ、何で最近冷たかったの?」
「いや、何て言うか‥‥男同士でこんな感情を抱いてるなんて、」
「うん」
「気持ち悪いだろうし」
「うん」
「いつか離れたとき俺がダメになりそうで、怖かったんだ」
「‥‥だからって急に冷たくなったら不安になるじゃんか。もーマジで俺悩んでたんだから」
「‥‥ごめん」
「いいけど別に」

吐き出された吐息と言葉は柔らかく、垂れた目尻と上がった口の端が月の明かりの下に映えていた。軽い口調は、同性だとか嫌悪だとか俺が恐れていた諸々の事象をあっさりと受け入れて、まるでそれが何でもないことかのように柔らかい真綿で包みこんだ。

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