《MUMEI》 私はこーたに手を伸ばした。 「やめて!」 れーこさんが叫んだ。 「やめろ、蝶子」 こーたは私を止めた。 「…どして?」 私は首を傾げた。 こーたは真面目な顔で言った。 「俺は、麗子の物じゃないが、麗子の悲しむ事は、したくない」 「れーこさんがすきなの?」 「嫌いじゃない」 「じゃあ、すきなんだ!」 私はこーたに背を向けた。 そして、驚いているれーこさんをギュッと抱きしめて、『よかったね、れーこさん! こーたがれーこさんすきだって!』と言った。 れーこさんは真っ赤になりながら、頷いた。 そんなれーこさんを見たせいか、私はすごくうれしくて、すっきりした気持ちになった。 (もう、帰ろう) 私はれーこさんからはなれた。 (あいさつ、あいさつ) 「じゃあ、ちょーこは帰ってねます。 おやすみなさい」 そして、私は呆然とする皆に頭を下げ、自然公園から家まで歩いて帰った。 …途中、レンタカーを運転する俊彦とすれ違ったので、『先帰るね。おやすみ』とメールをした。 そして、帰ってきた私は風呂に入り、ドライヤーで髪を乾かし、パジャマに着替えて眠った。 前へ |次へ |
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