《MUMEI》

「何で、謝るの?」


「な、何でって…」


(麗子さんが『やめて!』って叫んだのに孝太に抱きつこうとしたし…

その後、…何だか知らないけど、麗子さんに抱きついたし…)


私は微妙に記憶が無かった。


その事を麗子さんに正直に言うと、…爆笑された。


麗子さんは、私に記憶に無かった部分を説明し、その後の事を教えてくれた。


麗子さんは、孝太に『本当に?』と確認すると、孝太は、少し照れながら頷き、『抱きつかれるなら、今は蝶子より麗子がいい』と言ったらしい。


「そ、…それで?麗子さんは、何て?」


私はドキドキしながら続きを期待した。


麗子さんは、少し間をおいて、恥ずかしそうに…


「『私も、抱きつかれるなら、蝶子より、孝太がいいって』…」


(うわ〜)


何だか私まで照れてしまった。


そして、二人は、周りから催促された事もあり…お互い、手を伸ばし、抱き合ったという。


「良かったですね!」


「ありがとう、…でもね」

?


そこで、麗子さんは少し躊躇いながら続けた。


「『二人がラブラブなのはいいけど…何で、蝶子の名前が出てるのかな?』って、後から来た俊彦が言うから、…」

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