《MUMEI》

「ハナー……」

あの人が呼んでる。

「あの人に用があります?」

「はは……流石に無いわなあ。」

立ち上がる姿は会った時と10歳は違う。

「じゃあ、畑に戻ります。」
「ハナちゃん!」

あの人の声が後ろからも聞こえて驚いた。

振り向くと頬に接吻される。
微かに肌が触れ合って、彼の皮膚には火傷で爛れた痕が在った。

黙って去る彼は追ってはいけない気がしてならなかった。



後から、あの人の実家は一度火事になったと思い出して、あたしはあの時間違ったのかもしれないと思うときがある。

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