《MUMEI》
お仕置き
それでも昼間はやっぱり気まずくて、私は咲子さんに配達を頼んでしまった。


「…待ってたのに」


「ご、ごめんね。オムライス、作るから、ね?」


微妙に不機嫌な俊彦の横をすり抜けて、私は台所に向かった。


「蝶子、アイスだと覚えてるんだね」


「そう…みたい」


私は鶏肉を小さめに切り、玉ねぎをみじん切りにした。


それを、油で炒め、冷やご飯を加えて、軽く炒めたら、…俊彦好みに多めにケチャップを加える。


「日本酒そのものだと、女王様で、記憶無くて、アイスだと甘えん坊で、記憶あるんだ」


「そう…みたい」


俊彦は、台所に来て、『ふぅ〜ん』と言った。


私は、出来上がったケチャップライスをボールに入れた。


それから、卵にマヨネーズをたっぷり入れて、かきまぜる。


(こわいよ〜)


その様子を、俊彦はただ無言で見つめていた。


…珍しく、無表情で。


「き、緊張するから、…向こうで、座ってて?」


「わかった」


俊彦は、冷蔵庫から飲み物を出して、テーブルに向かった。


…音からして、炭酸系の飲み物のようだが、ふと見ると、コップに注いだ飲み物は、無色透明だった。

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