《MUMEI》

(珍しいな)


俊彦は、いつもビールなのに。


私は、そんな事を考えながら、オムライスを仕上げた。


そして、俊彦が『冷蔵庫にある』と教えてくれた、ゴボウサラダを取り出し、ちぎったレタスと一緒に盛り付けた。


スープは、『クローバー』で残っていたクラムチャウダーを持ってきていた。


「出来たよ」


「…ん」


俊彦は、私の目の前にある空のグラスに、自分の飲んでいるのと同じ飲み物を注いだ。


「これ、…何?」


「カクテル。俺、昨日全然飲めなかったから、今晩は、…付き合って」


「う、うん」


(俊彦ほどは飲めないけど…)


それで、俊彦の機嫌が直るなら、頑張って付き合おうと思った。


「じゃ、乾杯」


「あ、…うん」


私達は、グラスを合わせた。


カクテルは、甘く、飲みやすかった。


「美味しい?」


「…うん」


頷く私を見て、俊彦は嬉しそうに笑った。


「オムライス、美味しいよ」


「良かった」


私は、俊彦よりも一回り小さく、マヨネーズも入れていないオムライスを食べながら、笑った。


食事の合間に、カクテルは、二杯ほど飲んだ気がする。


(あれ〜?)

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