《MUMEI》

「腹減ってね?」

「減ってない」

「――もう寝る?」
「…うん、そうしようかな」




佐伯はクローゼットからTシャツを出しながら


「日高は?俺の着るだろ?」



「あーワリイもうこれ借りてます」


「そっか、ならイイけど」



勝手にクローゼット開けて借りたしトランクスは我慢してもう一日だ。



だから勝手知ったる我が家なんだって!
――つか…もし佐伯が女の子だったら…
俺この家に365日入りびたってしまうかも…。




―――って、おい!!
…長沢のせいでバカな事を考えてしまった。
俺に背を向け着替える佐伯。


―つか…すげ…
佐伯分かってねーのか?



背中、デッかいキスマークだらけだし!!

「佐伯……」


「ん?何?」


「―――いや…」



寝る時は大きなTシャツにボクサーパンツが佐伯の定番。


佐伯は余程疲れているのか着替え終えるとベッドにするりと潜り込んだ。








――照明は全て消した。

しかし窓から入ってくる外灯やらの灯りで室内は一様に照らされている。

俺に背を向けたまま微動だにしない佐伯。


鉄筋コンクリートに加えペア硝子の窓を使用したこの家は余程の爆音でなければ外界の騒音を通さない。

しかし…あまりにも静か過ぎて…。


「佐伯…寝た?」


何となくそっと話しかけてみるも返事はまるでなかった。



――何があったんだ?なんて聞ける訳がない。



だって…一目瞭然じゃんか…。

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