《MUMEI》
執事とメイド
(なるほど、こういう意味か)


私は、目の前にいる雅彦と結子さんをまじまじと見つめた。


「似合うでしょ!」


満面の笑みを浮かべる結子さんに、私は頷いた。


結子さんの出産予定日は八月の始めで、お腹は目立ってきていたのだが、経過は順調過ぎるほど順調で、非常に元気な妊婦だった。


今日は、五月五日。


雅彦の二十二歳の誕生日で、『シューズクラブ』では、雅彦メインのイベントが行われる。


雅彦は、去年は既製のスーツだったが…


今年は、結子さんお手製の執事服を着ていた。


「いい?雅彦。今日は、『ようこそ』じゃなくて、『おかえりなさいお嬢様』って言うのよ」


「う、うん」


見た目はクールな執事なのだが、結子さんに従う雅彦は、主人に忠実な『犬』のようだった。


結子さんはそんな雅彦の頭を、精一杯背伸びしながら『よしっ』と言って撫でていた。


「すっかり、飼い慣らされてるわねぇ…」


私は、咲子さんの言葉に苦笑しつつ、店内用のイチゴのショートケーキと、お土産用の米粉を使用したクッキーを運び入れた。


雅彦のファン向けなので、ショートケーキは糖分・脂肪分を控え目にしたものになっていた。

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