《MUMEI》

「これも着けてね」


咲子さんはそう言って、白いレースの付いたニーハイソックスと、『クローバー』のくまのぬいぐるみが着ているのと同じ、四つ葉のクローバーの刺繍が入ったフリフリの白いエプロンを取り出した。


「…咲子さんが着ればいいじゃないですか」


本来は私は厨房で、咲子さんがホール担当なのだから。


すると、咲子さんの目が急に鋭くなった。


「私だってね、着れるなら着たいわよ!
でも、仕方ないでしょ!
好きなのが似合うとは限らないんだから!!」


(た、確かに…)


咲子さんは、可愛いというより綺麗系で、シンプルなデザインやモノトーンが似合うタイプだった。


「…私も結子も徹夜で仕上げたのに…」


(うっ…)


それを言われると…辛い。

「今日、だけ…ですよね?」


「そうよ! 今日はお客も女の子ばかりだし!」


(それも、何だか…)


執事ならともかく、女の子にメイドが対応しても喜ばれないような気がした。


「だから…ね?」


「…わかりました」


私は結局言われた通り、メイドになり、ホールに立った。


「…おかえりなさいませ。お嬢様」


一応、精一杯の笑顔で言ってみた。

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