《MUMEI》




のんびりとしたペースで懐石料理が運び込まれゆったりとした時を過ごす。



「こんなにゆっくり食べるのなんていつ振りなんだろう…たまにはイイね」


「こーいったとこはだいたい2時間かけて、ちまちま出してくるからなぁ…、しかし酒も飲めねえで一口料理がたま〜に来るペースは俺的にちと辛いっすなあ、
きっと最後は食いっ足んねーできしめん食ってく羽目になりそうだぜ?」


「――はあ…、もう秀幸は…――――ね、俺運転するから飲んじゃえば?飲みたくてウズウズしてんだろ?」



すると時間を持て余し飽きれ気味の秀幸の表情がキュピ〜ンと光った。



「―――良いのか?」

「良いよ、飲め」




秀幸は遠慮なく早速電話で冷酒を注文した。


すると間もなく冷酒を持った惇のお袋さんがやって来た。




「いや〜!本当に桜さん加藤君に似てお美しい!!」


「まあ!もう秀幸さんたら!!」




――――はあ。




加藤のお袋さんが、秀幸に大ファンなんですって始まったもんだから、もうそっから二人で飲み始めてしまった。




昼間っからの酒であっという間に出来上がった二人は『桜さん』
『秀幸さん』と呼びあう間柄になるまでそれはそれはあっという間の事だった。



つか惇のお袋さん、マジで秀幸のファンみたいで、昔秀幸が座長公演した舞台に花束持って見にいったとか、映画は必ず試写会で観る様にして、その都度生秀幸に会えては黄色い声援を送っていたらしい…、



まあ10年以上前までの話しみたいだけど。



――お袋さん、いやぁ…マジで加藤そっくり。


いや、加藤が母親似って言い方が正しいのか?



見たくれはぱっと見、秀幸と同じに見える位若く見える。



しかし惇によんじゅう何歳かだって聞いた事あるから実際はかなり年上だ。




しかしビシッと整った髪型に着物姿。


本当に正真正銘の美人で…


そして大人の色気…



なんか秀幸と絵になるっつーか、秀幸もデレデレしてるしお袋さんもファンだけあってベタベタ触ってるしで




俺はマジで…



「あ〜、ゆうちゃんここは最高だな!俺一人ででもまた来ます!」



「あら〜是非ともいらして下さい!秀幸さんならお一人でもこの部屋開けてお待ちしておりますわ!」



ガハハハオホホホの大合唱…


――くそっ!!





秀幸の大バカ野郎!!




――こんな事ならさっきセックスにもつれ込むんだった!!

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