《MUMEI》
大丈夫か?
俺は怒りを抑えながら部屋を出た。



備えてある草履に足を通し庭の錦鯉を眺める。


「ばかやろ…、秀幸のばか…」


俺はしゃがみ込みながら携帯を開きメールを打ちだす。




だってもう愚痴りたいっつ〜か!!




―――惇に聞いて貰うぞ!




――――――――
おい加藤!!
加藤のお袋さんが秀幸のファンなんて聞いてねーぞ!!
あんなに美人だなんて聞いてないぞ!
キ〜ッ!悔しい!

―――――――――



……送信…っと。



惇には何の罪もないのにこの時の俺は簡単に八つ当たりする位頭に血が上っていた。





―――加藤って呼び方。





『惇』ではなく『加藤』




別に何も意味もなく加藤と打ち込んだだけ。




本当に何も悪気のない事だったのに……。










――そんな些細な事で惇に発作が起こるきっかけになるとは俺は全くわかる訳もなく……。

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