《MUMEI》

「今までごめん」
「こちらこそ」
「好きだ」
「知ってるよ」

ざくざくと雪を踏みしめながら、二人で解答を確認していく。俺を悩ませ、銀二を泣かせたそれは、えらく生暖かくて、悔しいくらいに幸せだった。恋愛は一人では出来ない、当たり前のことに今更気付いた。

二人の手が触れた。ひんやりとして冷たい。寒いなら先ほどのようにポケットに入れればいいのに、乾いた風の中お互いに手をしまわない、わかっているんだろう、俺もこいつも。
ちらりと見た横顔は僅かに綻んでいた。
ごく自然に、どちらからともなく俺たちは手をつないだ。握った手はさらりと冷えていて、女のそれのようにしなやかでもなく、柔らかくもなかったけれど、その下に脈打つ血液さえ感じられそうなくらいにリアルだった。ぎゅ、と力を込めると、痛ェ、と低い声で文句が返ってきた。
その声が、体温が、霧散する白い呼吸の中の二酸化炭素すら、何だかもうたまらなく愛しくて、切なくて、幸福だった。

透徹した月明かりから柔らかい日差しへと空の照明が入れ替わっても、俺たちは互いに手を握りしめていた。
いつまでも、いつまでも。

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