《MUMEI》
放課後。
「武ィ〜!」

放課後、部活が終わると同時にかなたが待ってたように飛び出して抱きついてきた。

「おいっ、何なんだよι」
「…良い香りがする…部活だったんじゃないの?」

俺の胸に顔を埋めるとクンクン匂いを嗅いできやがった。

「部室にシャワーがあるからな、お前もさっぱりしてねぇ?」
「そ、そうかな///」

俺もかなたの頭を掴んで匂いを嗅ぐと、ほんわかと香水みたいな香りがした。

「ねぇ…武」
「何だ?」

校舎の裏を通って寮への近道を歩く。

「今日さ…武の部屋に泊まってもいい?」

聞いてこなくても、ちょっと大きめなリュックを背負っていたからすぐに分かった。

「ベッド…1つしか無いぜ、お前達ん所と違って一人部屋だから狭いし…」
「いいよ///」

いいよ…じゃねぇよ…。

予備の布団があるワケねぇし、狭いし、それに部屋散らかりっぱなしだし…。

「部屋…汚ねぇぞ…」
「うん、分かってる///」

そう言ってかなたはにっこりと微笑んでくる…。

何だよ…可愛いじゃねぇか。


で、どうしてもついてくるってんで一緒に校舎裏のいつもの帰り道を歩いてプール脇のいつもの所に来た。

「ちょっ、武待ってよιドコ行くの?」

校舎から俺の居る寮はちょっと一階ぐらい低い位置にあるから、フェンスを乗り越えその段差を飛び降りようとしていたらかなたに止められた。

「怪我しちゃうよ、待ってι」
「このくらい降りられるだろ…」
「む…無理だよ、何メートルあると思ってんだよι」
「…知らねぇな」

慌ててるかなたを振り切ると、3メートルぐらいある段差をいつも通り飛び降りた。


「来るのか?来ないのかよ?…行っちまうぞ」
「ま…待ってι…ぅう〜ι」

上の方で青い顔をしながらモジモジしているかなたを見ていると、奴は急に泣き出してしまった。

「うっうくっ…ι」
「……しゃあねぇな、来い!」

モタモタしててもしょうがないので鞄を下に置き、上の泣いてる奴に向かって両腕を広げた。

「受け止めてやるからよ、大丈夫だって」
「た…武っ///」

かなたは喜んだり驚いたり面白れぇ顔をして慌てていたが、やがて覚悟を決めたのか飛び降りようと前に進んできた。

「ち…ちゃんと、抱きしめてね!」
「分かってるよ、早く来い!」

かなたはグッと拳を握るとちょっと怯んだりしていたが、次の瞬間、ひと思いに飛び降りてきた。

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