《MUMEI》

退室する住職の姿を見送ると、

会場内に葬儀の終了を表す言葉が響いた。


にわかなざわめきと共に、参列者達が立ち上がる。


うごめく喪服の黒が目に焼き付き離れない。


沸き上がる感情は常に悲しみであり、

胸の内に仕舞い込んだ思いの数々が限界を迎えそうだった。


今にも溢れそうだ。


それは離れの会食席で、

エレベーターの前で、

喫煙所で、

そして母の御前で。

母を知る全ての者達から放出する、

ひしひしと迫りくる心の葛藤が、

痛みと共に爆ぜる寸前であった。

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