《MUMEI》
眼差し
――心配して来てくれた気持ちがめっちゃ嬉しかった。
余計な事聞かないで一緒に眠ってくれるのがマジで有り難たかった。
なかなか寝つけない俺をよそに豪快に鼾をかいて眠る日高。
どうせ起きないのを知っていて頬を軽くつねってやる。
「――ぅ〜…」
するとネコが顔を洗う仕草宜しく俺の手を払いだした。
ちょっとだけ気持ちを和ませながら俺は…、ちょっかいを止めた。
『長沢は俺にどうして欲しい?』
タクシーを外で待つ中、俺は彼の眼を見据えながら尋ねた。
しかし暫くの沈黙の後次に言葉を発したのはまたもや俺の方だった。
「じゃあな」
俺はその一言だけでタクシーに乗り込んだ。
――はっきり言って俺は長沢が何を考えているのかイマイチ分からない。
しかし当の長沢も自分自身何を考えているのか良く分かっちゃいない様子だった。
――少なくとも長沢は俺に激惚れしてしまい調子が狂ってしまった事だけは分かっている。
恐らく…いや完全に長沢もそれは分かっている筈だ。
アイツは大馬鹿だ。
好きなら好きで真っ直ぐに想いを告げて真剣に俺に向き合って…
大切にしてくれるなら…
――もしかしたら俺、長沢の気持ちに答えたかもしんないのに…。
今日はマジで日高が傍に居てくれて良かった。
一人じゃきっと心が不安定でどうにもならなかったかもしれない。
―――抱かれる事を知ってしまった躰。
―――俺は……
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