《MUMEI》

(つ、疲れた〜)


慣れない接客と、『お嬢様』達の細かい指示での写真撮影から、私の疲労は、夕方の時点でかなり溜っていた。


「お疲れさま。夜の準備の時は休んでもいいわよ」


「い、いえ。そういうわけには…」


咲子さんの申し出はかなりありがたかったが、私は去年は知らないうちに厨房で寝ていて、準備を手伝えなかったので、今年は頑張るつもりでいた。


「でも、夜はメイドはもっと大変よ」


「夜も、この格好なんですか?!」


驚く私に咲子さんは『当然よ』と告げた。


(まぁ、…雅彦も、執事だし)


すると、咲子さんは更に驚くべき言葉を口にした。


「今日はメイドの蝶子ちゃんが主役なんだからね。

あ、主役っていっても、皆に奉仕はしてもらうけど」

「何でですか?! 今日は雅彦の誕生日ですよ?!」


悲鳴をあげる私に、咲子さんは『だって雅彦来ないし』と、サラリと言った。


「な、何で…」


「さすがの結子も夜は外出控えてるみたいなの。

だから、『結子がいないなら、俺も行かない』って…」


「じゃあ、今日は何の為の貸し切りなんですか?」


私は、恐る恐る質問した。

「ん? イベント成功の打ち上げ」

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