《MUMEI》

「まったく! 蝶子ちゃん。…俊彦君で、本当にいいの?」


「…はい」


私が頷くと、俊彦の顔がパァッと明るくなった。


咲子さんはため息をついた。


そして、悪戯っぽく笑って『じゃあ、たまにはメイドプレイ位させてあげなさいね』と言った。


その言葉を聞いた俊彦は…

多分、私の身内としてという意味かもしれないが…


咲子さんに向かって、満面の笑みで『ありがとう、おばさん!』と言ってしまった。


「お、…お、ば・さ・ん〜?」


「あ、その…」


(馬鹿)


咲子さんに向かって『おばさん』は禁句だった。


とりあえず…


咲子さんの怒りはせいぜい俊彦の弁当を一ヶ月断り、ケーキも『雅彦が』『クローバー』に取りにくるという…


俊彦曰く『酷い』


私にとっては『軽い』処分で済んだ。


咲子さんは、私が毎週火曜日の夜に俊彦の所に泊まりに行く事は、許してくれていたし。


本当に、咲子さんが俊彦を嫌いになっていたらと思うと、私は想像だけで何度も背筋が寒くなった。

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