《MUMEI》

「コレ?シャンプーも出来るんだよ」

そう言ってかなたは金色の髪の毛に色が付くんじゃないかってぐらいの石鹸をグリグリして泡立たせると、その泡で顔も身体も洗っていた。

「おいおいι…いいのかよ?」
「いいんだよ〜武も使う〜?」

そう言うとかなたは俺の頭にグリグリとその石鹸を擦り付けてきた。

「おぃっιお前///」
「大丈夫〜ね、いい香りだよ♪」

確かにいい匂いはするけど…それよりも…散髪でも無いのに、人に頭を洗ってもらうなんてどれくらいぶりなんだろう…。

…多分覚えてないくらい、昔の話だ。

「武、髪の毛長いね〜綺麗でスベスベだ♪」

俺の頭に手を伸ばしたかなたが洗いにくそうに背伸びをしていたので、その身長に合わせてちょっとしゃがみ込むと、ツルンとしたおでこを合わせて笑いながら、お互いの髪の毛を洗い合った。


「…キシキシすんぞ」
「えっ、何が?」

泡を流してから自分の髪を触ってみると、いつものシャンプー後よりも指の通りが悪くキシキシしていた。

試しにかなたの頭を触ってみると別にそんな事も無く、というより触った事が無いくらいフニャフニャしていた。

「お前サラサラなのに何でだよ…リンスで直るかな…」
「え、リンスって何?」

かなたがさっきから変な事を言っていたので聞いてみると”今まで髪にリンスなんかした事が無い”ときっぱり言いやがった。

多分、柔らかいブロンドだから柔軟剤であるリンスなんかしなくてもフワフワになるんだろう…。

「金髪って綺麗だし…便利だな」

自分の髪にいつも使ってるリンスをしながらそう言っていると、かなたも一緒に俺の髪を撫でてきた。

「俺っ…武の黒髪すっごく綺麗だって思ったし、ツヤツヤのシャキーンですごくカッコいいよっ///」
「そっ…か…」

毛先から襟足をかなたの細い指が触れてくる。

その指先の感触が、何だかゾクゾクくすぐったいカンジがした。


かなたの髪をドライヤーで乾かすと、すぐにフワフワになってブロンドが夕日に照らされキラキラと輝いていた。

「すげぇ…本当に金色だな」
「触りたい?触って…いいよ///」

かなたにそう言われ頭をポンポンと触ると、まるで猫みたいに柔らかくて、そのフワフワな髪の毛に顔を近づけて匂いを嗅ぐとほんわか爽やかなレモンの香りがした。


俺が髪を乾かしてる間、かなたは窓辺から夕日を眺めていた。

「外、面白いか?」
「ん///…夕日、綺麗…だね」

お前も綺麗だよ…と、かなたを見ているとそんな臭い台詞がつい口をついて出そうになってしまった。

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