《MUMEI》

「遅いぞかなたぁ!」
「ぎゃぁあ!」

はるちゃんは俺のずっと前を猛スピードで走り、コーナーを曲がってく。

(はるちゃんの好きなモノって、車だったの?あんなコーナリング、俺出来ないよ!)

そういえば…小さい頃、家族でドライブに行くとアウトバーンで一番はしゃいでいたのがはるちゃんだったような気がした。




「もう、日も暮れちゃったね…」
「うん、そうだな…」

フラフラしながらはるちゃんの腕にもたれかかると、意外と逞しい体つきにちょっとドキドキしてしまう。

双子なのに…はるちゃんはどんどん背も高くなって、筋肉も付いてきて、カッコ良くなっていく。

俺らはママの中に居た時からずっと一緒で、好きなものも一緒で、着ていた洋服も一緒、歩幅まで一緒だったのに…どんどん離れていっちゃうみたいで、なんとなく寂しくなってしまう。

「そこ、座るか?」
「ぅ…うん///」

寄りかかっていた俺を気遣うようにベンチに座らせてくれると、俺の大好きな甘くて温かい缶のおしるこを買ってきてくれた。

「こんなの飲めるなんて、どうかしてるぜ…」
「甘くてポカポカなんだよ♪」


はるちゃんは温かい缶コーヒー、俺と違って大人なんだな…。

隣にはるちゃんが座ってきたんで、俺はいつも通り隣にぴったりとくっついた。

甘いおしるこを飲みながら、はるちゃんの温かさを感じてほわほわとした気持ちになってくる。


「はるちゃん///」

はるちゃんの肩にもたれ掛かりながら、じっと目線を合わせた。

「何だよ…」
「キス…しよ///」
「…うん///」


はるちゃんの唇はお化け屋敷の時とは違って、温かくって…すごく気持ち良かった。

  

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