《MUMEI》

私で良ければ手伝うと言ったが、『お前は勉強しろ』とすぐに却下された。


「私の入試が終わったら、手伝うからさ。」
光は雰囲気を一掃するように明るく言った。

成原さんが生徒会室に姿を見せなくなった事実は、皆分かっていたが、口には出さなかった・・・。


そのまま光と杉田くん二人と別れ、同じ方角の百花と二人で家路に向かった。

途中、新しく出来た小さな携帯電話販売店があり、私は少しだけ立ち止まる。

「奏、携帯欲しいの?」

私は「うん。」と声を出して頷いた。

先生の家に行ってから、一ヶ月近く経っていたが、すれ違いでなかなか話す機会もなかった。もちろん担任だから毎日会っているが、もっと個人的に話をしたかった。家に押しかけるのも躊躇いがあって・・・この間のキスがまるで夢の出来事のように感じていた・・・。

「最近、さらに可愛くなったよね。奏。・・・大人っぽくなった。」

いきなり言われたので、びっくりして顔が熱くなる。
「そ、そうかな?」

取り繕ったが、百花には見透かされているような気がしていた。・・・でもまだ、先生とのことは話せない・・・先生の秘密を話さなくてはいけなくなってしまうから。

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