《MUMEI》

そして私達は、私鉄に乗り、駅からタクシーに乗り…

母の眠る山田家の墓がある霊園にたどり着いた。


「雨、止んで良かったね」

「ん…」


「…そんな顔してたら、俺、お義母さんに嫌われちゃうよ?」


「そんな事…」


慌てて顔を上げた私に、俊彦は『普通は不謹慎かもしれないけど、笑ってよ』と言った。


その時。


『本当に、不謹慎だな』と後ろから声がした。


(この声…)


私達が振り返ると、そこには、俊彦と同じようにピンクのバラの花束を持った中年男性が立っていた。


「光二、おじさん…」


私が名前を呼ぶと、俊彦が私の腰に手を回して、力強く自分の方に引き寄せた。

「やぁ、蝶子ちゃん。元気そうだね。

そっちの彼と挨拶はまだだったよね?

はじめまして。蝶子ちゃんの母親の弟の光二です」


「村居、俊彦です」


「とりあえず、姉さんの所に行こうか」


光二おじさんが歩き始めたので、私達も後に続くように、母の墓に向かった。


途中で、光二おじさんは『毎年来てるんだよ』と、前を向いたまま説明した。


「あれが、『よくわからない』光二おじさん?」


俊彦の言葉に私は頷いた。

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