《MUMEI》

「姉さん、今年は賑やかだよ。姉さんがあんなに…死ぬまで気にかけてた娘と、その彼氏が来たんだから」

先に花束と線香を置いた光二おじさんは、そう言ってから、『どうぞ』と私達に場所を譲った。


「はじめまして、村居俊彦です」


母に聞かせているのか、それとも私や光二おじさんに聞かせているのかわからないが、俊彦ははっきりした口調で墓石に向かって語りかけた。


「俺、蝶子が好きです。愛してます。一生、幸せにしますから」


俊彦はそう言って、頭を下げた。


「問題は山積みだけどね」

光二おじさんは茶化すように言った後、山田家の現状を語った。


祖父は、まだ時々見合い写真をチェックしていて


三枝さんは、まだ何も言わないから祖母も未だに微妙だ、と。


「で、でもね、母さん」


落ち込む俊彦を見て、私も思わず墓石に話しかけた。

「本当に、優しい人なの。私…俊彦が、…好きなの」

「蝶子…」


「感動的だねぇ…俺は、姉さんの言う通り、頑張って、『蝶子の味方』…してるよ」


光二おじさんは相変わらず軽い口調だった。


しかし、空の雲行と共に、光二おじさんの口調も、内容も変わっていった。

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