《MUMEI》

…どうしよう。
吉沢さんも黙っちゃってるよ……。




『…あの〜。
嘘です。嘘です。
もう遅いし……。』




私が何とか無かったことにしようと、必死になっていると、吉沢さんは少し笑い気味で、




『…そうだね。もう遅いし帰るよ。おやすみ。』




『…おやすみ。』




吉沢さんを乗せたタクシーは走って行った…。




“はぁ〜。”




家に帰ってからの私は反省三昧…。




恥ずかしながら、25歳にして初めて男の人と二人きりで車に乗った。




初めてラーメン食べた。




私は中学生みたいに、ドキドキしている胸の鼓動を感じ、顔が熱くなった…。




…何やってるんだろ私。




“恋愛したい”という気持ちと“25年間未経験”の恐怖で私は眠れなかった…。




誰かを好きになると怖くなる…。




私の片思いは、いつも“踏み出す勇気”と“素直になる勇気”が無くて終わってしまうんだ…。




みんなは、どうやって恋愛してるんだろう…。




こんな相談は25歳という現実が邪魔をして、誰にも出来なかった…。




“…吉沢さん。”




彼の事を考えると、幸せな気分になる。




彼の事を考えると、もっと彼を知りたいと思う。




そして、私の事も知ってほしいと思っていた。




誰にも言えなかった悩みを相談するため、私は親友の“礼”にメールをした。




礼と明日、仕事帰りに会う約束をして、この気持ちを“私の過去”をすべて聞いてもらうんだ…。




礼はヒクかもなぁ…。




25年間、彼氏いないなんて知ったら…。




とても恥ずかしいけど、とても怖いけど、誰かに聞いてほしい…。




そして、聞いてもらうことによって私も変わりたい。

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