《MUMEI》

そういえば、と
ジィさんが思い出したように呟く昔話はまるでフィルムを回したように鮮明だった。

蔵で遊んでいた国雄と恒光だったが、国雄は父の壷を割ってしまう。

父は躾の厳しい厳格を絵に描いたような人間だった。

恐ろしくて只、泣きじゃくるばかりの国雄。

恒光は冷静に互いの衣服を交換する。

そして父に言った。
『自分〈国雄〉が割りました……と。』

あの父が怖くないはずないのに恒光は庇った。

丸裸で縄で括られ蔵に閉じ込められても真実は明かさなかったのである。

恒光は暫く体調を崩した。勿論、体中に痣を受けて。

国雄は後悔し続けた。
たまに耳鳴りがするのだ。
悲鳴にも似た謝罪の言葉、怒声に合わせて襖の先で重なる影に怯え、内心安堵し同時に嫌悪した。

国雄は蔵の外で恒光に誓う。
今後一切の悪行は〈国雄〉が引き受けると。

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