《MUMEI》
おまじない
東京駅に着くと、俊彦が急に『泊まっていこうか』と言い出した。


「え?」


「ね?、決まり」


「だ、駄目よ!明日も仕事だし」


「始発で帰れば間に合うよ」


「そ、れはそうだけど…」

時間的には間に合うが、私は、俊彦と泊まるには抵抗があった。


二人で泊まるということは、…俊彦が何もしないわけは無かった。


普段の私なら受け入れるところだが…


「今日は、駄目だから、…帰ろう、ね?」


そんな私の耳元で、俊彦が『生理だから?』と言うから私は真っ赤になった。


(な、何で知ってるの?)


「蝶子の事なら何でも知ってるよ。大丈夫だから…ね?」


私の心の声までしっかりとわかっている俊彦は、そう言うと、テキパキと、駅前のホテルのダブルを予約した。


そして、俊彦の提案で途中でドラッグストアに寄って、お互い必要な物を購入した。


私は恥ずかしくて、俊彦と一緒にではなく、時間をずらして店内に入り、素早く買い物を済ませた。


それから私達は、ホテルに向かった。


「ビジネスで良かったのに…」


俊彦が予約したホテルは、外観も部屋も予想外に立派で、私は戸惑っていた。

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