《MUMEI》 時ニ馨シイ「坊ちゃん、坊ちゃん。」 慌ただしく実朝が駆けて来た。 「はい、居ります。」 俺を見るや否や分厚い眼鏡を掛けられた。 「此れ、絶対に外さないように。」 人に指を指すな……と、兼松〈様〉が見たら怒気を荒らげるだろう。無茶苦茶して呉れたものだ。 眼鏡は伊達だったが安物の硝子で歪みがある。 鼻は重いし、視力が良い分邪魔な飾り付けだ。 所謂、変装である。 自身も本家の執事や下男の仕種を見習うつもりだ、誰が進んでこちらから素性を明かそうか。 「はい、実朝〈様〉」 大人しくしておく。 「悪意が篭った返答だ。」 此の男には云われたくなかった。 前へ |次へ |
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