《MUMEI》

「いいんだよ。今日は大事な用事を済ませたんだから」


俊彦はそう言って、私の意見も聞かずにフロントに電話をし、ルームサービスを頼んだ。


しばらくすると、サンドイッチとチーズの盛り合わせと、カットフルーツ、それに冷えたシャンパンが運ばれてきた。


「大袈裟じゃない?」


「どこが! 蝶子のお母さんにちゃんと自己紹介して、蝶子も俺の事お母さんに紹介してくれたんだから、これくらい普通だよ!」


俊彦はそう言ってシャンパンをグラスに注いだ。


「でも…」


光二おじさんが言っていたように、私達にはまだまだ問題がある。


それに、祖父母や三枝さんの事以外に…私はどうしても光二おじさんが言っていた事が気になっていた。


「…蝶子。あのおじさんの言ってた事、気にしてるの?」


「…うん」


うつ向く私に俊彦は『大丈夫だよ』と言って笑った。

「冬には会ってくれるんだから。エミさん、違った、三枝さんだって悪い人じゃないし。何回も訊かれたら、そのうち答えるかもしれないし。

それから…

俺は、おじさんが言うように蝶子が昔そんなに熱出してた子には思えない」


俊彦があまりにはっきり言うので私は首を傾げた

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