《MUMEI》 星空その日は七夕で、私の誕生日だった。 去年と同じように『赤岩』に集合した私達は、去年と違って全員浴衣だった。 私は、今度こそ、去年の誕生日プレゼントの浴衣を身につけていた。 そんな私に、俊彦は『可愛い』と何度も言った。 「浴衣嫌いって言ってなかったっけ?」 私が俊彦と和馬と孝太を睨むと、三人は口を揃えて『浴衣が嫌いな男はいません』と答えた。 「そうだよな〜浴衣はいいよな〜」 今年も駆け付けた父が、しみじみと呟いた。 「ちょうこちゃん、おりひめみたい」 友君は、今年は私を『ちょうこ』と呼べるようになっていた。 「外、星が綺麗よ」 華江さんの言葉に、酔いも回ってきていた商店街の人々は、店の外に出た。 皆、歓声を上げながら、星空を見つめていた。 『お母さんは、お星さまになったんだよ』 ? 「父さん…」 私の言葉に、父が駆け付けた。 「どうした?」 「『お母さんは、お星さまになったんだよ』って、昔、私に言った?」 私の質問に、父の笑顔が固まった。 その表情にも、見覚えがある気がした。 (あれは、いつ? 何て質問したら、父さんはこんな顔に…) 前へ |次へ |
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