《MUMEI》

「どうしたの?二人共」


考え込む私と、戸惑う父に声をかけてきたのは華江さんだった。


「ちょうこちゃん?」


華江さんに寄り添う友君は、私を心配そうに見つめていた。


「何でも…」


『何でもないよ、蝶子ちゃん。
まだ、熱があるんだから、寝てなきゃ駄目だよ』


(そうだ…)


私が友君と同じ位の頃。


考え込む父に、話しかけた。


『君は熱を出す子供』


光二おじさんの言葉が頭をよぎる。


「熱…」


「? 熱があるの? 大丈夫?」


華江さんが近付いてきて、私の額に触れた。


『やっぱり熱があるわね、蝶子ちゃん。
今、お迎え頼んだからね』

「熱…お迎え…」


「蝶子? 大丈夫?」

「…」


呟く私を華江さんは心配そうに…父は、深刻そうに見つめていた。


「ちょっと、頭が痛くて…」


「蝶子〜?! どうした?」

俊彦が慌てて私に向かってきた。


「うぉ?!」

「うわぁ!」


俊彦が、克也さんと…


ぶつかった。


「「イテテ…」」


「もう、ドジね」


薫子さんが克也さんの元に歩み寄る。


私は、妊娠している薫子さんよりも、ゆっくりと俊彦に歩み寄った。

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