《MUMEI》
A君
――また同じクラス…しかも席、前後だし!!


――はっきり言って惚れています。


眼の前の席に着く男子、坂井裕斗に。




この気持ちに気付いたのは中一の頃だった。



――今考えれば小学生の頃から好きだったんだと思う。




―――だってさ……


ガツン!!



「――坂井、またよろしくな〜」




俺は坂井の背中を軽く足蹴りした。



するとかなり気落ちした色を浮かべながら坂井は振り返り俺を見た。



「――――うん」




机に投げ出された俺の脚をちらりと見た後、また正面に戻った。



「一年間宜しくな〜」



身をのりだしそう囁くと彼の躰が僅かに震えた。







――だってよ…、
苛めたくなるんだよ。



こんなつまらない行動は永きに渡り続いている。




俺はきっと奴の中じゃ一番最悪な存在なのかもしれない。





――でも…どうにも止められねーんだよ……







「坂井って白過ぎて気持ちワリイよな〜!蓮田もそう思わね?」




生徒会役員の蓮田直哉。
何故だか最近坂井の傍をうろついている。


気に入らねえ!!



坂井から絶対遠ざけてやる!!




「そうか?むしろ綺麗で羨ましいけどな…」


「マジで言ってんのか?知ってる?アイツ小学生ん時から苛められてんだぜ?なあ、お前もアイツからかってストレス発散しね?
――アイツさ…、アイツの泣き顔スッゲー面白……」



ガツンッ!!!


「!!!!!」




――鬼の様な形相ってこんな顔の事を言うんだって…思った。




「――お前が主導で坂井を苛めてんの俺は知っている…。
お前が坂井に惚れててバカな事してんのなんか……全部お見通しだ」


「―――な…」




胸ぐらを掴まれる苦しさよりも…





心の内を殆ど話した事もない奴に身透かされて……







マジで心臓止まったかと思った。








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