《MUMEI》
「――俺さ、お前の存在消しといたからさ」
「―――――?」
力強い眼光で見下ろされ…、そして俺を離した。
そしてドスンと床に落ちた俺を置き去りにして蓮田は教室から出ていった。
「おい!大丈夫か?」
小学生からの親友山田が俺に駆け寄る。
「…アイツ…、ゼってーぶっ殺してやる!!」
何が生徒会だ!
何が学年トップだ!!
―――アイツも…
ヤってやる……
▽
担任の熊田が真っ青な顔で現れた。
数学の時間が自習に変わり、何故か俺だけ教室から出された。
付いてくる様に促され辿り着いたのは校長室。
中に入ると何故かお袋がソファに座っていた。
▽
俺はお袋の隣に座らされ担任は横のソファに座る。
一度も話した事のない校長は俺らの正面に座った。
「――相葉君、君はなんて事をしてくれたんだ、全く我が校始まって以来の大惨事ですよ!」
ハゲ校長が一番先に切りだしてきた。
「あの、うちの息子がなにを…」
「苛めですよ、お母さん…、しかもかなり陰湿な苛めです」
担任が今にも死にそうな面持ちで静かに言った。
「まさか!うちの子がそんな事!ウソですよそんな!うちの子がそんな事する訳ないじゃないですか!」
お袋は口を尖らせてまくしたてる。
「誰が言ったんです!そのでたらめな事を言った子の方が苛めっ子なんじゃないですか?……全くわざわざ呼び出されたと思ったら!わたくし出るとこに出てもいいんですよ?
いえ、早速PTA集会を実施させて頂きます」
――さすが俺のお袋。
万年PTA役員、今年度は会長就任。
「僕も見に覚えが有りません、とても傷つきました、…侵害です」
しょんぼりと頭を垂れる位造作もない。
だって俺は、いつも担任やお袋の前じゃいい子を演じてきているのだから。
「――残念ながらお母様、証拠があるんですよ」
校長はそう言いながらソファの脇にあった紙袋の中身をテーブルの上に出した。
―――分厚い紙の束。
パソコンで作成したのか表紙のタイトルが
『2年D組坂井裕斗に対する相葉昭人によるイジメ実態報告書』
――と書いてあった。
担任はとても口がきけない様子でただ俯いている。
校長が紙束を開きながら解説を始めた。
体操着をカッターで切り刻んだ日付、時間、その人数。
ホームルーム中に俺が背中を脚蹴りして坂井が椅子から落ちた日付、時間、目撃者人数。
その他諸々…
小学生の頃から続いているとの匿名希望の証言、内容も記載されていた。
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