《MUMEI》

「そんなこんなモノ!文章だけじゃ何の証拠にもなりませんわ!今すぐその坂井って生徒呼び出してください!その生徒に直接確認すれば分かる事なんですから」




「そうです!僕は何もしていません…酷い…坂井君と僕は友人なのに…」






お袋は俺の頭を抱き抱えながら泣き怒りに震えている。







――そうだ、坂井を呼べばいい。





アイツが本当の事を言う訳がない。



――そんな事をしたら…何が待っているのか良く分かっているだろうから。





坂井は俺に絶対にばらされたくない事があるから…







「――今度は親子で彼を苛める気ですか?」





熊田がそう、静かに言い、なぜか不気味な笑みを浮かべた。

「先生?それはどういう意味ですか」




お袋がそう言うと熊田は紙袋からまた違う束を出してきた。



「携帯からの画像なので多少見ずらいですが確かに相葉とはっきりと確認が出来ます」





――それは中一の三学期、嫌がる坂井を数人がかりで押さえつけ、下半身をむき出しにさせ俺の携帯に画像を収めた時の…一部始終の画像だった。






押さえつける場面。




馬乗りになる場面。




脱がす場面。





―――満面の笑顔の…俺…。





――そう、この時撮った画像…、俺の携帯の中に今でも収めてあり、これを他に撒かない条件で坂井を呼び出し…。




時には躰を触った事もあった。




「お母様、この書類、実は教育委員会から直々に教育長がお持ちになったんです」



校長がそう言うと熊田も続けた。



いつの間にか熊田からは情けない表情が抜け、力強く…俺達親子を見据えていた。





「相葉君は坂井君に対して激しく人種的差別発言があると…、その事が一番の問題だと教育長は強くおっしゃられていました。
…坂井君は例え戸籍上は日本人でもドイツ人とのハーフなんです、うちの中学はご存知の通りドイツハンブルクの中学校と姉妹校になっております…、これはもう…我々だけではどうしようもない大きな問題になってしまっているんです…」











後日知った事。


教育長の名字は





『蓮田』





――蓮田直哉は教育長の孫だった。










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