《MUMEI》

光二おじさんは、慎重に一つの饅頭を選んだ。


「それでいいんですね?」

「あ、あぁ…」


「じゃあ、割ってみましょうか」


春樹さんは笑顔で饅頭を割って…悲しそうな顔をした。


「あなたは運の無い人ですね」


春樹さんが、光二おじさんに饅頭の中身を見せる。


白い餡子を見て、光二おじさんは慌てた。


「や、やめろ!」


「この位なら、大丈夫でしょう?」


孝太が『手伝ってやれ』と言うと、祐介さんと勇さんが二人がかりで光二おじさんの口を開けさせた。


「ねぇ、食べるとどうなるの?」


「死ななくても、じんましんと熱位出るだろ」


麗子さんの質問に、孝太は淡々と答えた。


「蝶子を傷付けたんだから、…ねぇ?」


夏樹さんが言うと、皆が深く頷いた。


そして、愛理さんが、『はい、あ〜ん』と言いながら、饅頭を口に入れ、男性陣が、飲み込むまで口を押さえていた。


そして、俊彦の手が私の口から離れた。


「…ねぇ」


「何?」


「あれって、『花月堂』の七夕饅頭よね?」


「そのはずだけど…脅しが効きすぎたんじゃない?」

光二おじさんは、気絶していた。

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