《MUMEI》

「はい、犯人確保、と」


俊彦は、優馬さんにもらったおもちゃの手錠を光二おじさんにかけた。


「証拠の録音も出来てるぞ」


「何で録音マイクなんか持ってるの?」


麗子さんの質問に孝太は、『本屋の店長に朗読の録音頼まれたから』と答えた。

(そういえば…)


私は去年の年末、明日馬さんの新刊を購入した時に、店長から『孝太に朗読を頼んでいる』という話を聞いた事を思い出した。


そして、光二おじさんは、父の車に乗せられ、山田家へ運ばれた。


帰り際、父は『蝶子ちゃんは悪くないから』と言って、私を抱き締めた。


そして


『もう山田家の許可は必要無いから』ときっぱり言って去っていった。


「あの…でも、皆、どうして…」


私の言葉に、皆が『どうして?!』と大声を上げた。

「蝶子は、それだけ皆に愛されてるって事だよ」


俊彦の言葉に、皆が頷いた。


「ありがとう…ございます」


私がポツリと言うと、皆は順番に無言で頭にポンと手を置きながら、公園を出ていった。


最後に、年長者の夏樹さんが、『一応、恋人なんだから、ちゃんと慰めなさいよ』と俊彦の背中をバシッと叩いた。

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