《MUMEI》

ついでに、俺は少々嘘をつかせて戴いた。

姉貴の居場所は知らないが、姉貴の靴は見付けている。


だって、しょうがない。

そこで俺が足を踏み入れれば廃屋の幽霊に隠蔽させられてしまう。

幽霊は暴力的で、単細胞だ。

仕方なく俺は姉貴の部屋に置き忘れられた香水の瓶を粉々に砕き切っておいて、廃屋の裏手にある叢から撒き散らした。

早朝にあそこから放る。

預かっていた犬を連れ、散歩の途中に犬が用を足すように。

臭いに敏感な犬が吠えてしまうのが少し気掛かりだだったが、ただの散歩だ。
躊躇う事は無い。

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