《MUMEI》 「で、でも。私ばっかり幸せで…」 「そんな事無いよ。俺も幸せ」 「でも、…」 「蝶子が幸せだと、商店街の皆も幸せ。 …ちなみに、その逆もあるんだよ」 「…逆?」 首を傾げる私を、俊彦が優しく抱き締めた。 「蝶子がいなくなったら…蝶子が不幸なら、俺も、皆も不幸になっちゃうよ。 それでも…まだ、不幸になりたいの?」 「だって、私の、せい…」 「お義父さんは『違う』って言ったよ。 『蝶子の迎えを一子に任せたのは俺だから』って…」 「違う!そんなの…」 私が叫ぶと、俊彦は『うん、違うよね』と言って私の頭を撫でた。 「誰のせいにもできるけど、誰のせいにもできない。 事故って、人の生死ってそういうものだよ、きっと」 熱を出した私。 母に迎えを頼んだ父。 慌てていた母。 見通しの悪い交差点。 雨。 脇見運転の車。 その全てが『たまたま』ー偶然だった。 「でも…光二、おじさんは、一人…」 「それは、自業自得!」 俊彦はきっぱりと言い切った。 「蝶子が俺や皆に愛されてるのは、蝶子が頑張ったから。 それに…蝶子の人生、結構『不幸』だよ?」 前へ |次へ |
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