《MUMEI》 「それは、俺と会えたからって…自惚れて、…いいんだね?」 「話、それてる…」 「だって、蝶子。顔…真っ赤」 「だから!」 俊彦が私の頬に手を添えてきたので、私は慌ててその手を振り払った。 「いいじゃん。俺が好きだから、俺を幸せにしたいから、俺を不幸にしたくないから、…一緒にいるって事にすれば。 それとも、あんなおじさんがそんなに大事?」 「それは無い!」 即答する私を、俊彦はベッドに押し倒した。 「じゃあ、問題無いじゃん。 これで、俺も、蝶子も、幸せ…だろう?」 「う…で、でも…」 「蝶子が不幸なら、亡くなったお母さんも、不幸だと、俺は思うな」 俊彦の顔が徐々に近付く。 「あの…今日は、別に、しなくても…」 「心の傷には、愛情が一番だよ」 俊彦は私の涙の跡をペロリと舐めた。 「で、でも…」 「今日の蝶子は『でも』ばっかりだね。いいんだよ。迷ってる時は、俺に流されちゃえば」 (それってどうなの?) 再び私は『でも』と言おうとしたが、俊彦に口を塞がれてしまった。 …公園では手だったが、今度は唇で。 そして、俊彦は呪文のように繰り返す。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |