《MUMEI》
ブザー
「とにかく、テラが何か関係してるってことよね?」

羽田は二人の間に割って入るように口を開く。

「まあ、無関係ではないと思いますけど」

凜はそう言って、ふと羽田の顔を見る。

「え、なに?」

「そういえば、さっき先生が襲われかけた時、一瞬マボロシの動きが止まりませんでした?」

「あ、俺も思った。そん時、なんか変な声も聞こえたよな」

レッカが頷く。

「ああ、うん。そうなの。あれ、多分テラが助けてくれたんだと思うんだけど」

あの時、周りには何もいなかったのだから必然とテラが助けてくれたということになる。

「だとすると、ますますわかんねえな。マボロシの動きを止めることのできる奴なんて、今まで見たこともないし」

「マボロシ同士なら、できるんじゃない?」

「はあ? ……じゃ、なにか? このチビもマボロシだとでも言うのか?」

「可能性はあるでしょ」

凜はテラを見つめながら言った。
そういえば、昨日も彼女はそのようなことを言っていた。
しかし、羽田にはこのかわいらしく三人の様子を見つめているテラが、あの凶暴なマボロシの仲間とは思えない。
それはレッカも同じらしかった。

「マボロシがこんなに人に懐くわけねえだろ。だいたい、今はこいつの正体じゃなくて、先生がこっちの世界しか見えなくなった原因をだな……」

「だから、テラの正体がわかればその原因がわかるかもしれないでしょ」

凜がそう言った時、部屋にブザーが鳴り響いた。

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